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【SAMBO】日露善隣友好関係の懸け橋として、何としても開催したいという想いがありました |プーチン杯大会実行委員長 浅井信幸


大会後に選手と浅井信之大会実行委員長に話しをお聞きました。

今大会から9階級から7階級に変更になりました。
その変更の影響を大きく受けた一人である52kg級元全日本チャンピオンの山本晃太選手(写真左)、また52kg級、57kg級と出場してきた河澄亮祐選手(写真右)に試合後の感想をお聞きしました。

山本:普段の体重が52kgに近く減量もほとんどありません。対戦相手の58kg級の選手とは組んだ時の力や全体的にも52kg級とは全然違うと思いました。スタイル的になかなか組ましてもらえなかったのもありますが、組んだ時の力も違うので作り切れなかったです。

河澄:自分は以前52kgでずっと出場していましたが、ここ23年は57kg級に出ていたので、そこから1kg増えたので減量が少し楽になったぐらいで自分の動きなどは変わりませんでした。ただ今回の対戦相手は前回62kg級で出場していたので、リーチが長くてとてもやりにくかったです。1kg違うと上の階級だった選手が階級を下げてくることもあるので、その時は対格差が出ると思います。

山本:今後チャンスがあればまた国際試合も出場したいのですが、技以前に身体負けをしてしまうと思うので、まずはフィジカル面を鍛えていきたいです。その次に技のレベルも上げていきたいです。何年か前から階級が無くなるかもしれないという話が出ていたのですが、やはり思い入れのある階級だったので寂しいです。そして出場しようと思っていた最後の52kg級の世界選手権が無くなってしまったのが一番残念でした。


大会実行委員長の浅井信幸氏に大会のことや『プーチン大統領杯』という冠について話をお聞きしました。

浅井氏は山下泰裕オリンピック委員会会長のパーソナルアシスタントであり、山下氏とプーチン大統領の会談の時にはロシア語の通訳もこなします。

プーチン大統領杯全日本選手権大会 大会実行委員長 浅井信幸

今回大会を開催するということにはとても意義がありました。

普通のスポーツの大会でしたら見送るという選択も十分にありましたが、東京オリンピックが終わった東京で、ロシア大統領の名を冠するロシアの国技の大会を開催するという事は日露善隣友好関係の懸け橋として、何としても開催したいという想いがありました。

最近FIAS(国際サンボ連盟)IOC(国際オリンピック委員会)に正式加盟しましたし、サンボのユニバーシアードと世界大会で優勝した濱田尚理選手がオリンピック女子柔道で優勝したりと、コロナの事が無ければもっと大々的に大会を開催したかったです。

『プーチン大統領杯』という冠がついた経緯についてですが、2013年にロシアのカザンでユニバーシアードが開催され、この時にサンボが正式種目になりました。その3年前、2010年に当時全柔連副会長であった山下先生(現オリンピック委員会会長·山下泰裕氏) と、プーチン大統領(当時は首相)、国際サンボ連盟のシェスタコフ会長が会いました。そこでシェスタコフ会長から「ユニバーシアードに日本から強い選手を派遣してくれませんか?以前日本はサンボの強豪国だったが今は残念ながらそうではない。」という話が出ました。プーチン大統領は「いいね!」とおっしゃいました。すると山下先生は「柔道家の山下がサンボで何が出来るか分からないけれど、自分がロシアにサンボの強い選手を派遣する事によって日露の友好関係に少しでも役に立つならば出来ることは全てやります。」と答えました。プーチン大統領は大変喜んで「山下さん、頼むよ!」と約束が出来ました。その会談の後、山下先生から「昔サンボチャンピオンだったんだろ?全面的に協力するから頼んだぞ!」と託されました。

当時はお金も無い、強い選手もいない、組織もしっかりしていない。どうしたらその全てをクリアできるか。それにはユニバーシアードの予選を『プーチン大統領杯』としてやるしかない!と思いました。ただ、普通そうそう大統領の名前は使えません。ロシアでも大統領の名前の付いた大会は基準が厳しくとても少ないです。ロシアの格闘技局の方々も、日本の、しかもユニバーシアードの予選大会になぜ大統領の名前が付くのかとびっくりしていました。これは山下先生の存在が大きかったです。プーチン大統領はすぐ許可を出してくれました。

日本のテレビ局のインタビューだったと思うのですがプーチン大統領が尊敬する柔道家を3人あげていました。嘉納治五郎先生、小説の登場人物ですが姿三四郎、そして山下先生でした。お二人の面談の時には通訳をしていますが、お二人の信頼関係、友情関係がすごく良く分かります。

日本サンボ連盟はJOC(日本オリンピック委員会)に加盟していないこともあり、フルメンバーをユニバーシアードに派遣出来ませんでした。それでもロシア、ベラルーシに次いで総合3位の成績をおさめました。山下先生はプーチン大統領との約束を果たしました。それから『プーチン大統領杯』としての本大会は続いています。


2019年、プーチン大統領によるロシア連邦大統領令により、体育、スポーツ、社会活動の各分野の発展に大きく貢献した人々に勲章が授与されました。山下泰裕氏は名誉勲章を、浅井信幸氏は友好勲章を受章しました。

写真:一般社団法人日本サンボ連盟

Photo by 八木沼志保/Shiho Yaginuma,一般社団法人日本サンボ連盟
Text by 八木沼志保/Shiho Yaginuma

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