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【Interview】コンバットレスリングアジア選手権について|吉澤理事長インタビュー

 

2024年8月4日(日)埼玉県本庄市・本庄総合公園体育館(通称:シルクドーム)で開催される第7回コンバットレスリングアジア選手権大会の案内が届いた。

日本コンバットレスリング協会理事長 吉澤昌さんにコンバットレスリングの歴史やルール、大会の概要などについてインタビューをおこなった。


新明:コンバットレスリングの歴史を教えて下さい

吉澤:1994年3月に「協会設立記念大会」が開催され、翌年の1995年3月に「第1回全日本選手権大会」が行われました。
約30年の歴史を持つ、サブミッションレスリングの草分けとも言える存在です。

その後は、日本国内を中心に大会が行われていましたが、2015年に初の「世界選手権大会」がブルガリア・ヴァルナで実施されました。
ブルガリア、マルタ、ハンガリー、セルビア、カナダ、USAがエントリー。
日本選手団も参加し、吉澤禅(ユースの部)、新村定仁、岡倫之の3選手が金メダルを獲得。
2016年はハンガリー・タマシーで「第2回世界選手権大会」が、そして2017年には日本の埼玉県本庄市で「第3回世界選手権大会」が開催されました。
埼玉県本庄市は、コンバットレスリング創設者・木口宣昭氏(1944-2021)が幼少期を過ごした街で、2016年には「第1回コンバットレスリングアジア選手権大会」が「本庄市初の国際スポーツ大会」として行われました。

世界選手権が初めて開催された2015年に、それまでのルールを国際的に整備し、ルールブックが改訂されました。
そこから「コンバットレスリング」の「第二章」がスタートです。

2023年9月には、韓国協会主催で、日韓2チームずつが参加した団体戦「GTB x6」が韓国・高陽市で行われました。

新明:ルールの特長を教えて下さい

吉澤:
・シューズ着用が義務
・クローズドガード禁止
・ブレイク後はスタンドから再開

シューズ着用は、コンバットレスリングのアイデンティティと言えるかもしれません。
シューズはレスリングシューズまたはサンボシューズが認められており、裸足は不可です。

ルール的には、「組み技の最大公約数」だと思います。

設立当初から上半身裸で指定のショーツを着用して試合を行っていましたが、2015年世界選手権以降は、上半身はラッシュガード、下衣はファイトパンツと定められました。
レスリング、サンボ同様に赤または青のコーナーカラーに準拠した色のウエアが必要です。

実際の試合における特徴では、「両者スタンド状態」(=接着面が足の裏のみ)から試合がスタート/リスタートすることです。
一方がグランド状態、もう一方がスタンド状態という異なるポジションで試合が進行することは基本的になく、例外はスタンド状態の選手がグランド状態の選手にサブミッションホールドを試みている状態のみです(逆は反則)。
つまり、グランドに持ち込むためには相手を完全にテイクダウンすることが必要です。
もちろん引き込みは反則ではありませんが、引き込みを試みたにもかかわらず、相手がスタンド状態を維持していると、引き込んでいる側の選手に「スタンド」に戻ることが求められます。不完全な引き込み行為の繰り返しはコーションの対象です。引き込みを試みる選手は、すぐさま相手をグランド状態にすることが必要です。

テイクダウンは、内容によって「1」「2」「4」ポイントが与えられます。
ポイントの考え方は、サンボルールに近いと言えます。
いったんグランドになると、どちらか一方が攻撃(サブミッション)を行っていると認めている間はそのまま続行となります。
ただし、一方の選手がスタンド状態になった場合は、基本的には両者スタンドに以降します。
柔道のような抑え込みポイントもあり、1試合で最大で4ポイント獲得することができます。
膠着を避けるという観点から「クローズドガード」が禁止となっているのは競技創設以来続いている特徴です。

また、スタンド状態の相手にサブミッションホールドを試みることは反則となります。

一本で試合が終了しなかった場合は、獲得ポイント数の多い選手が勝者となります。

新明:足関節の制限はありますか?

吉澤:ヒールフックは反則です。
当初のルールでは有効な攻撃でしたが、世界選手権開催の2015年にルールが変更になりました。

トーホールド、アキレス腱固め、膝十字固めは有効です。

新明:カテゴリーを教えて下さい。

吉澤:
アダルト(19歳以上)
ベテラン(35歳以上)※大会によっては40歳以上
ユース(18歳以下)
※キッズ(15歳以下で特別ルール採用)

[アダルト&ベテラン]
男子階級 : 52, 57, 62, 68, 74, 82, 90, 100, +100 kg
女子階級 : 48, 52, 56, 60, 64, 68, 72, 80, +80 kg

新明:勝つためにはどんな技術が必要ですか?

吉澤:前述の通り、テイクダウンの技術があると圧倒的に有利です。
引き込みでグランドに持ち込む場合は相手に触れて(掴んで)座るだけではコーションの対象になるため、一瞬で相手の膝を着かせる等の戦略が必要ではないでしょうか。
その上で、極め力があることが理想です。

新明:過去に活躍した選手はいますか?

吉澤:真っ先に佐藤ルミナ選手、五味隆典選手の名前が出てくると思います。
2015年の世界選手権開催以降では、岡倫之選手(現プロレスラー)、総合格闘家の出花宗太郎(キャプテン☆アフリカ)選手、渡部修斗選手らが世界選手権で優勝。
他にはレスリング出身の小田貴久選手、ブラジリアン柔術のベテラン・田場マサオ選手、プロレスラーの倉島信行選手らの活躍が印象に残ります。

アジア選手権では、ブラジリアン柔術の米倉大貴選手、”ANKLE BREAKER”のニックネームでONEなどで活躍したLEE Sung Jong選手(韓国)、総合格闘家の本野美樹選手らが優勝。「DEEP JEWELS 44」で勝利したLIBBY選手、ブラジリアン柔術・トライフォース所属の関友紀子選手もメダルを獲得しています。ベテランの部(=マスター)では、元U系戦士・上山龍紀選手も優勝経験があります。元コンバットサンボ世界王者のオルホンバータル・ソニンフー選手(モンゴル)は2年連続優勝の実績があります。
柔術のベテラン、小岩健一選手も国内外の試合に数多く出場されていて、昨年韓国で行われた団体戦には、ミスターコンバットレスリングともいえる尾藤広光選手と一緒に出場ちました。

新明:年間何大会くらい開催されていますか?

吉澤:全日本選手権とアジア選手権の2大会を国内で開催しています。
アジア選手権は、将来的に各国の持ち回り開催にする予定です。

新明:アジア選手権で勝利すると世界大会に出場できますか?

吉澤:行けます!
正確に言いますと、パンデミック以前は全日本選手権が世界選手権代表予選を兼ねていましたが、現状の世界選手権は国別の出場選手数制限がないため原則エントリーはフリーです。
そのため、アジア選手権や全日本選手権で優勝しなくても世界選手権へのエントリーは(現時点では)可能です。
ただ、エントリーは個人ではなく各国連盟を通じてナショナルチームとして登録します。

新明:吉澤さんが思うコンバットレスリングと柔術の共通点や相違点を教えて下さい。

吉澤:大きな違いは、サブミッションホールドを極めるまでの道のりでしょうか。
テイクダウンしてトップをとる、あるいはロールやプルダウンで一瞬でサブミッションのセットアップをすることが必要になるのがコンバットレスリングの特徴です。
下になるディフェンシブな闘い方をみせることを防ぐため、クローズドガードは禁止されています。
とはいえ、柔術選手のエントリーも少なくありません。韓国選手を例に挙げると、3〜4割は柔術選手である印象です。「10th Planet Jiu Jitsu」所属の選手は各支部からエントリーがあります。

コンバットレスリングの原理原則は、「投げて極める」競技だと感じています。
ルール上「スタンド状態」の相手にサブミッションを極めることは禁じられていますので、相手を確実にグランド状態に持ち込むことが不可欠なので、テイクダウン力が強いと試合を有利に進められます。

共通点は、「極め」の強い選手が勝ちやすいルールというところでしょうか。

創設者の木口先生は、「コンバットレスリングは打撃を取り除いた総合格闘技なんだ」とよく言っておられました。いろいろな考え方はあると思いますが、いろいろな組技の「最大公約数」がほどよく表現された競技だと思います。

新明:最後に出場を検討している方々へ一言お願いします。

吉澤:普段柔術をメインに練習されている選手にとって、スタンドレスリングの義務がある点に抵抗を感じるかもしれません。
ただ、UWWグラップリングを例にとってもスタンドレスリングのスキルは不可欠要素になってきつつあります。
オリンピックスタイルレスリングやサンボ、柔道に比べれば、圧倒的に柔術スキルを発揮できるルールになっています。対比するとグランド重視のルールになっているので、立ち技にそれほど自身がない選手でも入りやすいのではないでしょうか。もし御興味をもっていただいたのなら、次は出場に向けて一歩踏み出していただけたら嬉しい限りです!
そして、以前組み技格闘技をやっていた大人の格闘家の方にとっては、いちばん身体に優しいルールでると思います。



プロフィール
名前 吉澤 昌 / Masashi Yoshizawa
生年月日 1969年11月28日
出身地 埼玉県
所属道場 SK-Academy水道橋

 

大会概要

木口宣昭杯 第7回 アジアコンバットレスリング選手権大会 2024
本庄大会要項(Ver.01)

1)主 催 一般社団法人 日本コンバットレスリング協会
2)主 管 コンバットレスリングアジア選手権大会実行委員会
3)後 援 本庄市/本庄商工会議所/日本格闘競技連盟(JMAGA)
4)協 力 本庄市レスリング協会
5)日 程 2024年8月4日(日) 10:30開会式〜終了後試合開始
6)会 場 本庄総合公園体育館(通称:シルクドーム)/サブアリーナ
〒367-0031 埼玉県本庄市北堀433 ※駐車場あり
7)参加資格 下記のいずれかに該当する者
1) アジア諸国のパスポートを所持する者または取得予定者
2) 日本国に3年以上在住し、それを証明する書類を明示できる者
3) 大会実行委員会が特別に推薦した者(国籍は問わない)
8)参加条件 下記すべてを遵守すること
1) 各自で傷害保険に加入していること
2) 大会参加時にパスポート等(顔写真付身分証明書)を明示できること
3) 大会ルールと競技ルールを遵守し、それを誓約すること
4) 本要項の内容を遵守すること
9)カテゴリー
a) 男子アダルト(2005年以前に生まれた者)
62 / 68 / 74 / 82 / 90 / 100 / +100kg
b) 女子アダルト(2008年以前に生まれた者)
57 / 64 / Open Weight
c) 男子ユース(2009年以後に生まれた者=さらに年齢でカテゴリー分けする)
申告した「通常体重」により体重カテゴリーを制定する
※計量時の体重は「通常体重」の1kgオーバーまで認める
d) 男子ベテラン(1982年以前に生まれた者)
62 / 68 / 74 / 82 / 90 / 100 / +100kg
注1)ベテラン選手はアダルトへもエントリーできる
注2)ベテラン選手の2カテゴリーへの同時エントリーを認める
(例)ベテランとアダルト
注4)18歳以下でも実行委員会が認めればアダルトへの出場を許可する
10)試合形式 (時間)
5分 男子アダルト
4分 女子アダルト・男子ベテラン・男子ユース
トーナメント方式またはリーグ戦形式で行う。
11)計 量
[A] 8月3日(土)15:00〜15:30
[B] 8月4日(日)09:00〜09:30
上記どちらか一方の時間帯で計量を受けること。
前日計量を希望する選手は事前に連絡をすること。
時間内(30分)であれば何回でも計測可能。
交通事情により、特別処置を行う場合がある。
12)参加費 4,500円/ダブルエントリー=6,000円
注)出場キャンセルによる参加費返却は行わない
振込先 埼玉りそな銀行 児玉(こだま)支店
普通口座 3979146
シャ)ニホンコンバットレスリングキョウカイ
13)申込方法 出場申込書(別紙)の必要事項すべて記入し、次のいずれかの方法で送付。
① Googleフォームから申込
② https://forms.gle/3cUwJcy3ZbaSaZxP89
《締め切り》 2024年7月21日(日)必着
14)備 考 要項に変更がある場合は、下記の「Facebookページ」にて告知します。
https://www.facebook.com/JAPANCW/
15)問い合わせ先
〒169-0073
東京都新宿区百人町2-22-16 シエン・コンドミニオ214号
有限会社MCアブソリュート内
日本コンバットレスリング協会 アジア選手権事務局
問い合わせ info@mca.jp / 090-3348-6738 (担当:ヨシザワ)
大会ページはこちら

Photo by
Interview by 新明佑介/Yusuke Shinmyo

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