国内で最も歴史があり、最高峰とされているのがJBJJF主催の全日本選手権だ。
この全日本選手権は例年の真夏の開催ではなく今年は体育館の都合で春の開催となり、4/9-10の2日間、東京・綾瀬の東京武道館で行われた。
98年に1回目の全日本が開催されてから日本の柔術の歴史が始まったと言え、またこの全日本で優勝することこそが“日本最強”の証でもある。
その中でもやはり柔術において最高位の帯色である黒帯が大会の花形カテゴリーであることに間違いない。
今大会のトピックとしては黒帯で10回優勝の偉業を達成した芝本幸司と、黒帯昇格以来まだ負けなしのイゴール・タナベの連勝記録更新だった。
芝本は四十路を超えてなお強さは健在で、まだ20代でイキのいい双子のウエノ兄弟を準決勝と決勝で連破しての優勝で、ベテラン健在をアピール。
逆にイゴールは階級別ではアラフィフの長田雅仁を、無差別ではそろそろ四十路に手が届こうかというトーマス・ミッツをそれぞれ決勝で破っての戴冠で、ベテラン勢を打ち破る勢いを見せた。
ベテラン・芝本と20代前半のイゴールは年齢こそ対照的だが、その強さはどちらも同じで日本を代表する柔術家であることに疑いの余地はないだろう。
ルースター決勝戦
芝本幸司(トライフォース)
vs
チアゴ・ウエノ(IGLOO)
準決勝でイヤゴ、決勝戦でチアゴを破って優勝の芝本。イヤゴにはアームロックを極め、チアゴからは2-0で勝利。2年ぶり・10度目の全日本優勝を決めた。
昨年はまさかの敗戦で10連覇を逃したものの、今回の優勝で前人未到の全日本10回優勝の偉業を達成した。この記録は日本柔術界の金字塔であると断言したい。
ライトフェザー決勝戦
米倉大貴(IGLOO)
vs
横山大鋳(パラエストラ吉祥寺)
今大会で突出したパスガード能力を見せつけていた米倉。いままでノーギのイメージが強かったが、この全日本優勝でギありでも強いことを大いに印象付けた。決勝戦は5-2でここでもパスを決めた。
フェザー決勝戦
ホベルチ・オダ(CARPE DIEM)
vs
塚田市太郎(ダムファイトジャパン)
トーナメントの3試合を極めきって優勝したホベルチは。決勝戦は難敵・塚田を相手に9:18 腕十字を極めて一蹴。塚田は準決勝で山中健也を下すアップセットを演じたがホベルチには完敗。
ライト決勝戦
毛利部慎佑(REDIPS)
vs
世羅智茂(CARPE DIEM)
昨年は決勝戦で衝撃の一本負けを喫した毛利部だが今年は危なげなく優勝。決勝戦は師匠・小野瀬龍也直伝のスイープからの三角絞めで8:02 一本勝ちで快勝した。
ミドル決勝戦
チアゴ・ハタダ(UGC)
vs
高本裕和(高本道場)
45歳の高本は2020年以来の決勝戦進出も35歳のチアゴにハーフガードで完封されて敗北。勝利したチアゴはこれが初めての全日本制覇で0-0/2-1で接戦を制しての初戴冠だ。
ミディアムヘビー決勝戦
トーマス・ミッツ(CARPE DIEM)
vs
井上啓太(GROUND CORE)
松村威の欠場によりワンマッチ決勝戦となったこの階級はトーマスが井上からポジションを奪いまくって大量ポイントを獲得し、14-0という大差で判定勝ちし、4年ぶり3度目の優勝を果たす。
スーパーヘビー決勝戦
イゴール・タナベ(IGLOO)
vs
長田雅仁(CARPE DIEM)
黒帯昇格後負けなしのイゴールに対し、リベンジを期して挑んだ長田だったが無残にも三角絞めで1:20 秒殺一本負けで返り討ちに。だがアラフィフで全日本出場&決勝戦進出は立派な戦績だろう。
ウルトラヘビー決勝戦
ランジェル・ホドリゲス(RRT)
vs
野村洋平(リバーサルジム新宿Me,We)
3人巴戦で2試合を一本勝ちして優勝のランジェル。1回戦はケネス・トーマスを、決勝戦は野村洋平をそれぞれ送り襟絞めで極め、全日本マスターに続きアダルトでも全日本を制覇。
オープンクラス決勝戦
イゴール・タナベ(IGLOO)
vs
トーマス・ミッツ(CARPE DIEM)
ブラジル人のイゴールとフランス人・トーマスの外国人同士の決勝戦となったオープンクラスはイゴールが得意の三角絞めを極め、4:24 一本勝ちでWゴールド獲得。
2020年から3年連続優勝&2年連続でWゴールドのイゴール・タナベは日本最強の黒帯といっていい。イゴールは5月にMMAの試合に出てから渡米し、ムンジアル出場のためのポイント獲得のためにIBJJFのローカル大会を転戦する予定だ。
Photo and text by 橋本欽也/Kinya Hashimoto