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【柔道】『まったく新しい柔道の寝技の教科書』「腹包みっていうこういう技もあるよ」と原形は教えました。そこから本人なりにいろいろ研究と工夫、アレンジをしてできたのが舟久保固めなんです。|矢嵜雄大インタビュー【前編】

富士学苑柔道部監督として2019年に女子史上2校目となる高校団体3冠を成し遂げた矢嵜雄大(やざき・ゆうた)。
2022年は富士学苑を金鷲旗、高校総体での優勝に導き、自身の技術をまとめた著書『まったく新しい柔道の寝技の教科書』も上梓した。

22年の指導を終えた矢嵜は、年末に母校である流通経済大学付属柏高校で講習会を実施。腹包みや自身の教え子である舟久保遥香(2022世界選手権57kg級銀メダル)が考案した舟久保固めを中心に指導を行った。

現役時代には柔術家とも練習での交流を持ち、自身の技に取り入れ、現在も指導に役立っていると話す矢嵜。講習会を終えた後に話を聞いた。


──今日は腹包みを中心とした講習でした。

矢嵜 舟久保遥香が世界選手権に出たのもありますし、主催してくれた先生方のリクエストでそうなりました。でもみんなよく知っていましたね。今は(腹包みが)主流になっているのかなと感じました。ただ「舟久保固め」に関しては舟久保だからできるっていうのもあると思います。

──使いこなすのは難しい?

矢嵜 今日参加してくれた女子選手は、みんなまだ腕力がないんですよね。腕力のほか、あとリーチの長さ、体幹、体の力も必要です。

──舟久保固めは矢嵜監督と舟久保選手がともに考え生み出されたのでしょうか。

矢嵜 元々舟久保には徹底して帯取り返しをやらせていて、国際武道大で柏崎克彦先生にお会いして教わったこともありました。そうやって中学の時はひたすら帯取り返しをやっていたんです。

──帯取り返しからどうやって腹包み、そしてその変形である舟久保固めに変わっていったのでしょうか。

矢嵜 帯取り返しと腹包みは脇をすくって帯を持つか、あるいは腹をくくるか、その違いだけなんです。東海大甲府の男子でよく腹包みをやっている選手がいて、「腹包みっていうこういう技もあるよ」と原形は教えました。そこから本人なりにいろいろ研究と工夫、アレンジをしてできたのが舟久保固めなんです。

──最初は帯取り返しに取り組み、そのエッセンスを活かして腹包み、そしてさらに改良を加え、舟久保固めを編み出したと。

矢嵜 そうです。本人に一番合う形・スタイルが腹包みで、舟久保固めだったんです。自分は基本的には帯取り返しと、あと腹包みの原形を教えただけです。

──やはり教わったものをそのまま使うのではなく、自分に合うよう形を変えて取り入れるのが大事なのですね。

矢嵜 そうです。最初は受け売りというか、まず教わったことをやって、その中で本人なりに実戦に合う、実戦で取れる形にアレンジしていく。守破離の理論です。人それぞれでやっぱり同じ技をやっても、手足の長さや体力、考え方だったりが違うので、それで変わってくるところがあると思います。

──その時に大事な部分は損なうことなく、自分に合った技にしていかなければならないと。

矢嵜 やっぱり臨機応変に、実戦に合うよう、その形を自分で見つけて作っていけるか。最初はみんな統一して同じ形をやっても、そこが大事だと思います。

後編に続く


■矢嵜雄大(やざき・ゆうた)
高校時代に岡野功、実業団時代に柏崎克彦といった名伯楽の指導を受け寝技を得意とし、その独自のスタイルで世界ジュニア選手権優勝・全日本学生体重別選手権・全日本選抜体重別・嘉納杯などで優勝し、2003年には世界選手権に出場。
2011年に富士学苑柔道部の監督に就任し、2019年には女子史上2校目となる高校団体3冠を達成。


まったく新しい 柔道の寝技の教科書(矢嵜雄大/著)
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