井賀孝の写真の話【第2話/全12話】
『旅と写真』
前回の続き。
1997年、ニューヨークで柔術を習い写真を撮り始めた私だったが、すべてがスカッと痛快に抜けて万事うまく転がりだしたわけではなかった。そこまで人生は甘くない。
ニューヨークにはチャンスを求めて、文字通り世界中から才能ある若者が集まってくる。今もそれは変わらないだろう。そんな中、金もなく、アメリカ国籍も持たない東洋人の私にチャンスはなかった。滞在するだけなら、レストランやレンタルビデオ屋、カラオケ、スナックなどの在留日本人向けの店でバイトしてお金を稼ぎ、居座り続けることはできたのだろうけど、そのままズルズルと居続けることになるのだろうなと思い、日本に帰ることにした。一年後の1998年のこと。事実、そういう帰るに帰れない、タイミングを失ってしまった、日本人を何人も見た。
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