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【柔道】『まったく新しい柔道の寝技の教科書』20年前には、格闘技の道場へ出稽古に行くと、“何やってるんだ、あいつら”という目で見られましたが、今では全日本男子のヘッドコーチが柔術家を招いて、交流練習会をやるようになりました。それは柔道界がいい方向へ前進しているのかなという感じがします。|矢嵜雄大インタビュー【後編】

富士学苑柔道部監督の矢嵜雄大(やざき・ゆうた)は現役時代、多くの格闘家・柔術家と交流を持ち自身の技を磨いてきた。そして昨年、その技術をまとめた著書『まったく新しい柔道の寝技の教科書』を出版した。

柔道にはない技、そして発想が現役時代はもちろん、現在の指導にも活きていると矢嵜は言う。広く視野を持ち、垣根を作らず交流する大切さを矢嵜が語る。

【柔道】『まったく新しい柔道の寝技の教科書』「腹包みっていうこういう技もあるよ」と原形は教えました。そこから本人なりにいろいろ研究と工夫、アレンジをしてできたのが舟久保固めなんです。|矢嵜雄大インタビュー【前編】こちら


──昨年は自身の技術をまとめた『まったく新しい柔道の寝技の教科書』を出版しました。

矢嵜 まだ体が動いて、頭と体が一致しているうちに出させて頂いてよかったです(笑)。自分も本を作るにあたって改めて動画を見たり勉強をして、自分の技術が整理されたところがありましたし、もし何か行き詰まった時はあの本に頼ろうと思います。本を作っていろいろ反響がありました。

──柔道を学ぶ人、中でも特に若い選手へ向けた本かと思いますが、著書をどのように活かしてほしいですか?

矢嵜 やっぱり一生懸命にやっていたら壁にぶつかることがあると思うので、本の中でも言っていますが、立ち技に限界を感じたり、今の柔道に行き詰まっている選手は参考にしてもらいたいです。

──寝技に活路を見出した、矢嵜監督のようなやり方もあると。

矢嵜 自分の場合は柔術や他の格闘技の寝技がかなり参考になりました。渡辺直由さん、植松直哉さん、高瀬大樹さん、生田誠さん、そういった方たちと接点・交流を持たせて頂いて、柔道にはない技が選手時代参考になりましたし、指導者としても指導する上でも参考になっています。

──組み技だけにとどまらず、キックボクシングなど他の格闘技にも取り組んでいたことを著書の中で明かしていましたね。

矢嵜 先日国士舘大学に強豪柔術家と国士舘大学の学生だったり日本トップクラスの選手たちが集まって交流練習会をやって、ああいうのを自分の現役時代に全日本のコーチの先生方が主体となってやってくれていたら、自分自身ももっと変わっていたのかなっていう思いがあります。

──柔道だけでなく、広く視野を持ち貪欲に学んでいく姿勢が大切なのかと思いました。

矢嵜 20年前には、自分や早川憲幸(※明治大学での同級生。コロンビア代表監督を経て現JR東日本女子柔道部ヘッドコーチ)が格闘技の道場へ出稽古に行くと、“何やってるんだ、あいつら”という目で見られましたが、今では全日本男子のヘッドコーチが逆に自分の大学へ柔術家を招いて、交流練習会をやるようになりました。それは柔道界がいい方向へ前進しているのかなという感じがします。

──柔術にも取り組む小見川道大さんが、柔道と柔術、互いの技術を交流して伸ばし合うために企画した練習会でした。

矢嵜 鈴木桂治先生も先日グランドスラムで会ったのですが、柔術家は軽量級の選手でも斉藤立選手とスパーリングをしたり、そういう貪欲さ・ハングリーさをすごく感じて驚いたと。だから一昔前の柔道界の理念だったり思想を今の柔術家が持っているのかもしれません。逆に見習うべきものが多かったと話していました。

──今後もこういった垣根を越えた交流が継続していってほしいですね。

矢嵜 小見川先輩は本当に心が大きいし、鈴木ヘッドコーチも考え方が大きいです。柔術の方もそうやって柔道の選手と交流を持つと、また違う世界が見られて得るものがあるかと思います。自分と早川ノリが20年前独自にやっていたことが今はオフィシャルなものとして行われるようになり嬉しいです。


■矢嵜雄大(やざき・ゆうた)
高校時代に岡野功、実業団時代に柏崎克彦といった名伯楽の指導を受け寝技を得意とし、その独自のスタイルで世界ジュニア選手権優勝・全日本学生体重別選手権・全日本選抜体重別・嘉納杯などで優勝し、2003年には世界選手権に出場。2011年に富士学苑柔道部の監督に就任し、2019年には女子史上2校目となる高校団体3冠を達成。


まったく新しい 柔道の寝技の教科書(矢嵜雄大/著) 
ベースボール・マガジン社販売部

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