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【Special】ヘンリー・エイキンスインタビュー|どんな動きやポジションの時でも常にプレッシャーを掛けることを意識している

ヒクソン・グレイシーの黒帯で、2000年代のヒクソンのジムのメインインストラクターを長く務めていたヘンリー・エイキンス。

ヘンリーの提唱する“ヒドゥン・ジウジツ”はヒクソンの“インヴィジブル・ジウジツ”のコンセプトを継承したヘンリー独自のものだ。

そのヒドゥン・ジウジツを日本で啓蒙している江良拓がネバダ州ラスベガスのヘンリーの元を訪れてプライベートレッスンを受講、新たな技術を日本に持ち帰った。

また江良はヘンリーのセミナーやキャンプを日本で開催することを計画しているとのことで、そういったことも含めてこのインタビューを行っている。


タク:プロフェッサーヘンリー、今回もインタビューの機会をいただきありがとうございます。これまで僕はサンタモニカとタイでのキャンプに参加しましたが今回のプライベートレッスンはまたそれらとは違いまして、気を付けるべきディテールが細かくて驚きました。一見シンプルに見えるセルフディフェンスにも繊細な要素がたくさんあり、実際に受けると自分が考えているものとは違いました。

ヘンリー:そうですね。すべての柔術にディテールはとても大切な要素となります。例えば「コネクション」からの微細な違いが大きな違いを生み出します。柔術では多くの人が「コネクション」の作り方を理解していません。昨日はセルフディフェンスをやりましたが、どこをどのように握るのかだけでも全く違うものになりましたね。

タク:正しくそうでした。立ち技でのセルフディフェンスでももの凄いプレッシャーを感じました。

ヘンリー:柔術において本当にセルフディフェンスは本当に大切な要素です。なぜなら、トラブルなどが起きた時、セルフディフェンスの状況としては「スタンディング」から始まることが多いからです。必ず「柔術」は立っている状態でも対応しないといけません。グランドに行っても大丈夫ですが、1日目のセルフディフェンスでは殆どの技「リストロック」、「アームブレーク」など、立ちでの対応方法でしたね。例えばリストロックでのテイクダウンからスタンディングでのアームロックで極めてその場から立ち去ることも出来るため、全くグランドに行く必要がないですね。なぜなら路上での場面を想定した際に、床がコンクリートの可能性が高いので、その際にグランドに向かうのは適切な判断ではないです。

分かりやすい例がナイトクラブなど、日本でいうところの六本木でしょうか。実際に私自身もそういった場面を経験したことが何度もありますが、クラブではみんな酒に酔っていて喧嘩が始まるとワイングラスなどが床に散乱し非常に危険ですね。
ですので、セルフディフェンスが非常に大切な要素になっていて、ヒクソンは「黒帯になる為にはセルフディフェンスを理解しなければならない」と考えています。

更にそのセルフディフェンスを学ぶ上で「ベース」も非常に大切です。タクが私を押そうと思っても崩せませんでしたがこちらは崩せましたね。

タク:正しく先ほどそのベース体感し、私も一応柔道3段ですが柔道の概念とも全く違っていて驚きました。これが「柔術のベース」なのかと身体で感じました。
プロフェッサーヘンリーのプレッシャーはスタンドでも感じられるのですが、その「ベース」から来ているのでしょうか?

ヘンリー:プレッシャーを感じられる理由の一つが「リラックス」を意識しているからです。ポジションを取っている状態や動いている際にもプレッシャーを掛けています。
殆どの場合、プレッシャーが掛かっているのは一つのポジションのみというのが多く、そこから動いてしまうとプレッシャーが無くなってしまいますね。私はどんな動きやポジションの時でも常にプレッシャーを掛けることを意識しています。

タク:今語っていたプレッシャーを言葉通り、直前に行ったロールで終始掛け続けられた事を感じられました。マウントですら息が出来ないほどのプレッシャーを感じました。

ヘンリー:トップでは常にプレッシャーを掛ける事が大切です。

タク:昨日のロールで仮にマウントから脱出してもハーフガードからのプレッシャーが掛かっていたのでどのポジションでも本当に悪夢でした。

ヘンリー:そうですね。仮にマウントから足をキャッチしてハーフガードに動いても、場合によってはプレッシャーがよりプレッシャーが掛かりますね。

タク:マウント→ハーフのループになってしまい非常に心が折られました。ハーフが怖いのでマウントキープを許してしまうとクロスカラーチョークを極められてしまいますね。

ヘンリー:マウントからはクロスカラーチョークは非常に極めやすいですね。今日はクロスカラーチョークをレッスンしましたが、クロスカラーチョークを極めようとすると必ずディフェンスをされます。その際にディフェンスの対処方法を理解し極める事が本当に大切です。相手の技術が高くなればその要素が非常に大切になってきます。
ヒクソンはその点において非常に卓越した技術を持っていて、彼はいつも宣言した技で極めてきます。

タク:昨今のコンペティションにおいてクロスカラーチョークの使い手が皆無になっているように見えますがそれについてはどう思いますか。

ヘンリー:少し昔でいうと、ホジャー・グレイシー、シャンジ・ヒベイロ、サウロ・ヒベイロ、ラファエル・ロバートのクロスカラーチョークはとても上手いですね。

そしてクロスカラーチョークを理解することは非常に重要で、オープンガード、クローズドカード、ハーフガード、マウント、クロスサイド、ニーオンザベリーなど「1つの技」がすべてのポジションで脅威になります。

タク:クロスカラーチョーク1つとっても、これだけの要素が詰まっている事実は殆ど知られてませんよね。

ヘンリー:そうですね。クロスカラーチョークがこれだけ有効な極め技とはまだ認知されていませんね。時々襟を握るグリップが遠すぎる時やグリップが深すぎる時がありますがどちらも違います。頸動脈は首の横でもなく後ろでもなく、前方にあるのでそこにプレッシャーを掛けなければなりません。
今日のレッスンはクロスカラーチョークについてやりましたが昨日とは全く違うものになりましたね。
今日は2つ目のグリップを作った瞬間に極まるのが分かります。昨日は完全にグリップを作って絞めたとしても何も感じませんでした。

タク:今日グリップの違いやコネクション、プレッシャーの掛け方のディテールを伺って今までの思っていたものとは別物と感じました。
そして、プロフェッサーのオープンガードもとても不思議でした。全力で前進しても全く動けず、逆に手首をコントロールされると簡単にスイープされるか、極められてしまいました。

ヘンリー:今日はオープンガードからのクロスカラーチョークを多用し、昨日はアームロックをより使いました。オープンガードでは腕をコントロールし、パスガードをしずらくしています。
そしてオープンガードをする際は1本の腕に対して2本の腕でコントロールすることが大切です。特に柔術では小柄な人でも効果的にするために必ずこれを意識しなければなりません。そのグリップを多用することで腕をアタックすることが出来ますし、相手が下がればテイクダウンにもつなげることができます。

タク:昨日のロールではフックスイープで何度もスイープされました。シンプルすぎて逆に混乱しました。

ヘンリー:フックスイープだけでなく、シザースイープも多用しますね。この2つのスイープのみでも十分スイープは可能です。複雑な動きは必要ないのです。昨今の柔術の動きは複雑すぎるところがあります。ガードは両足が相手の足の「内側」か「外側」に上手く足を駆使するのです。
ですから、ハーフガードなどの足を一つ跨がれた状態は危険なポジションと考えています。
両足が相手の外側にある場合は「シザースイープ」、内側にある場合は「フックスイープ」、とてもシンプルです。

タク:とても簡単に聞こえますが、実際にやるととても難しいです。

ヘンリー:コンセプトは簡単ですが、少し時間が掛かりますね。しかし例えば25種類のスイープを覚えるよりも2つのスイープを駆使できるようになった方が簡単ですよね。
ですから私は4つ程のスイープしか使用しません。とてもシンプルですね。
過去40年間でヒクソン、ホジャーは誰よりも卓越した柔術家でとてもシンプルですね。
サイドコントロール、マウント、バックからシンプルなサブミッションで極めるとても分かりやすいですね。特にヒクソンはプレッシャーを多用し、戦う時間が長くなるほどプレッシャーを駆使できますね。

タク:正しくプロフェッサーのプレッシャーは全く動けませんし、とにかく真面に呼吸が出来ません。

ヘンリー:呼吸が難しかったと思いますし、早く動けなかったと思います。
私がプレッシャーを掛けた際に相手が早く動けば動くほど、より体力を削ることが出来ます。だからプレッシャーは大切なのです。例え身体が小さくてもプレッシャーを使うことは出来ますし、駆使すべきですね。

タク:最後に改めて日本でのセミナーやキャンプを開催する予定はありますか?

ヘンリー:もちろん開催したいですね。佐世保でキャンプを予定してましたが残念ながらコロナパンデミックにより中止となりました。
現在は状況が良くなったため、ぜひ開催できることを楽しみにしてます。

タク:こちらもセミナー開催を実現できるように致しますのでぜひ宜しくお願い致します。
今回は貴重なインタビューの機会をいただきありがとうございます。

「JIU-JITSU NAVI MAGAZINE Vol.2」ラスベガス特集にヘンリー・エイキンスの師匠であるヒクソン・グレイシーについて語るインタビューが掲載されています。
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Interview by 江良拓/Taku era
Instagram

Text by 橋本欽也/Kinya Hashimoto

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